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別冊・詩と小説で描く「愛の世界」

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時の流れる侭に、其の四

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工場に付いてから、仲間達に芳江を引き合わせた。
男ばかり4人で始めた工場だが、
4年目の今年は従業員はパートも含めて、
20人程に成っていて、事務量も増えて来ていたのだ。
芳江には私のアシスタントとして、事務全般を任せる事にした。
細かい雑用から開放されれば、私は設計や製造に、
専念出来るのである。

是は芳江が私の元で事務全般を任せて、
暫く経ってからの事で有るが。
大柄な体躯と、何時もニコニコしている雰囲気から、
芳江の性格は細かい事には気配り出来ない大雑把で、
繊細な事は期待出来ない女だと思っていた。
何しろ自分が妊娠したのにも気付かず、
六ヶ月もほったらかして居たと言うのだから、
そんな先入観で芳江を見ていたのだが、
実際の芳江は全く違っていた。

何しろ記憶力が抜群で、
客先の電話番号は其の日の内に覚えてしまい。
従業員が独身であれば、住所や生年月日も総て記憶し、
家族持ちで有れば妻子の生年月日も含めて記憶してしまうのだ。
その後家族を含めた誕生日には、必ず何かをプレゼントするので有った。
主だった取引先の社長や役員、担当者の誕生日も総て記憶して
しまう程で有った。

工場を案内して、我が家に戻って来たのは、
家を出てから二時間ほどの事であった。

「あら、もう帰って来たの、晴美ちゃんは今寝たところよ」
「可愛いわね、お母さんが居なくとも泣きもせず、
 私と遊んで居たのよ、眠くなってからは、私の
 オッパイ欲しがってね、出もしないオッパイを吸いながら
 眠ってしまったのよ」

「お世話を掛けて、すみません。何時も寝る時には
 オッパイ飲ませながら、寝かせ付けて居るものですから」



田中美里05
「母さん、芳江が工場で働く様に成ったら、
 晴美の面倒見て呉れるかい、
 保育園には三歳に成ったら、預ける積りだから、
 来年の春まで面倒見てよ」

「孫の面倒見るのは嫌じゃ無いわよ、
 女の子だから、男の子の様に乱暴もしないだろうし、
 世話も掛けない、おりこうチャンだし、
 夕方芳江さんが帰って来るまで、お世話するわよ」

「いやー良かった、母さんがそう言って呉れると、
 本当に心強いよ、其の積りで父さんを説得して呉よね」
「ねぇ、貴方達未だお昼済ませてないでしょう、
 何か取ろうか、お寿司が良い、其れとも中華?」
「そうだね、それじゃ皆で外に食べに行こうよ、中華街が
 良いかな、其れともレストランが良いかい」
「良いわね外食なんて久し振りだわ、私着替えて来るわね」

「芳江は何が食べたい?」
「私は何でも良いわよ、晴美はラーメンが好きなのよ」
「そうなの、それじゃ中華街にでも行って見るかい」
「そんな贅沢しなくとも普通のラーメン屋で良いんじゃない」
「おぉ、早速堅実な女房振りだね、それじゃ俺に任せて
 呉れるかい、美味いラーメン屋知ってるから」

暫くして母が外出着に着替えて遣って来た。
「晴美がラーメン食べたいんだってよ、
 最近出来た(札幌ラーメン)の店に行って見ようか」

*昭和40年代初め札幌味噌ラーメンが流行りました*

「あら良いわね、晴美ちゃんが好きなのが良いわね」
私達は4人で最近出来た「札幌味噌ラーメン」の店に
クルマで向かいました。

「晴美、是からクマさんのお店に連れてて遣るからね」
「クマさん、居るの」
「ハァハァ本物のクマさんは居ないけどね、
 クマさんみたいなおじさんが居るかもよ・・」
「クマさん、怖い・・・」
「だいじょうぶだよ、晴美を食べようなんて言わないから・・・」

国道沿いに出来た「札幌味噌ラーメン」のお店は昼時には
何時も行列が出来るのですが、昼時間を少し過ぎた辺りでは
並ぶ事も無く、直ぐに座れました。

「お婆ちゃんと晴美ちゃんは、(大盛り)を二人で分けて
 食べようね」
「ウン」
「子供のお茶碗一つ下さいな」

母は晴美と並んで、大盛りラーメンを小さなお碗に、小分けして
食べさせているのです。その姿は何処から見ても「祖母と孫」の
姿でした。
この分なら皆仲良く遣って行けるかも知れないと、思う一時でした。
  1. 2014/10/26(日) 07:48:10|
  2. 母と妻と私の三角関係
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