◇10年振りの再会
2011年3月11日この日を日本人ならば誰しも忘れはすまい。あの東北の大震災を・・・
横浜に住む私の家の近くでも液状化現象でブロック壁が崩れたり道路に亀裂が走ったりしたものだ。
そんな未曾有の大震災が発生する丁度一年前2010年3月~12月頃まで、私は宮城県登米市で
新しい設備の立ち上げに苦労していた。其れは今までに何処の農機具メーカーも成功しなかった設備で
画期的な物だった、成功事例が無いと言うことは総てが手探りの状態で、
何度も作っては手直しを繰り返していたもである。
宮城県登米市と岩手県の一関市は隣接する町で、私は克って世話に成った事の有る、
あの隠れ宿を定宿と決めて宿泊していた。女将とは十年振りの再会であった。
女将の話によると、よしのさんは今も健在で、出稼ぎに行っていたご亭主も今は地元で働き、
夫婦仲良く暮しているとの事だった。
何度か宿泊して、宿の女将の純子と、恥かし気も無く際どい冗談も言い合うような
間柄になったのである、が或る日のこと、夕食の膳を運んで来たのは、
何時もの仲居ではなく、女将の純子本人だった。
「おやおや、今日は女将さん自らのサービスですか、こら光栄ですなァ」
私がわざと驚いて見せると、女将は目許に人の良さそうな皺を寄せて、
「今日は県内中学生のスポーツクラブの集まりがあって、当館でも急に何人かお
泊りを引き受けたもんだから、仲居さんがが皆てんてこ舞してるもんだから。
その上、うちの人も組合の会合で北陸の方へ出掛けて留守なんですよ」
そう言いながら何時も指定してある銘柄のビールの栓を抜き始めた。
「ああ、道理で旅館の中がザワザワしてるんですね」
「そうなんですよ。内緒の話ですけど、お客さんの中でも、学校の先生が一番スケベでなア、
私なんかも、よくお尻をさわられたりしますのよ」
女将はは何時ものように、問わず語りにそんな話を付け加えて可笑しそうにクスクスと笑って居る。
「学校の先生じゃなくても、女将さんのお尻なら誰でも触りたくなりますよ」
「まあ、嫌やだわァ、社長さんまでそんな事言って」
「それはそうとして、女将さん、ここらで息抜きに一杯どうですか?」
「そうですかア、それじゃア遠慮なく頂くわ」
女将は忙しいと言う割りには腰を落ち着けてしまって、別に遠慮する様子もなく、
私が勧めたビールを美味しそうに、半分ほど空けて、
「あア、お腹に滲みわたるウ」
と、いかにも土地者らしい素朴な表情に成った。
私はそれまで女将の年齢の事など気に留めても居なかったのだが、
改めてよく観察して見ると、頬や首筋はまだ四十代前半と思える肌の張りで、旅館が暇な時には、
畑仕事の真似事もすると言う土地柄のせいか、顔は多少陽に焼けているが、
目鼻立ちのくっきりした十人並み以上の美人系の顔立ちをしていた。
元々アルコールを嗜まない私は、コップに一杯もあれば十分で、
後のビールは残らず女将が平らげてしまった。その辺はよしのさんと好く似ていた。
「なあ、女将さん。オレ、夜になると、一人寝が寂しくてならないんだよ・・・
何時も思うんだけど、この辺は相手してくれる女性は居ないのかね」
「男のお客さんが居るところには女は付きもんですよ、居ない事もないけど・・・、
急に言われても無理ですよ。何、社長さんも、そんなに女が欲しいんですか?」
と、ビールが入ったせいか、潤んだような瞳でジッと私の顔を見詰め、
口許にスケベそうな笑みを浮かべた。
「オレだって男だからなあ、女房以外の女とオマンコがしたい事だってあるわサ」
「まあ、オマンコがしたいだなんて。
そんなにしたいんなら、私ので良かったら使うて貰ってもいいですよ」
「えっ、ほとうかい」
「嘘は言いません、あたしも、前々から社長さんの事気になってましたのよ」
思い掛けない女将の言葉に私は喉から手の出るような思いだった。
「美人女将が相手になってくれるなんて、そんな勿体ない話を、誰が断りますか」
と、降って沸いたようなその話に、私は思わず膝を乗り出した。
「だけど、あの人の良さそうなご主人に申し訳ないなァ」
「そんな事、あたしが口をつむっていたら分かりゃしませんよ」
女将は事も無げにそう言って、テーブルの上の食器類を片付け始めた。
食事の終わったテーブルの上の物を片付け終えると、間を置かずに隣の部屋へ蒲団を延べ、
「そんなら、仲居が帰ったら、戸締りしてから忍んできますから、先に床へ入って居て下さいな」
女将はまるで世間話の続きでもするようにそう言って、そそくさと食膳を下げて行った。
独りで部屋に残った私は、冷静になって彼女の言葉を考えて見ると、
如何にも旨い話で、ひょつとしたらからかわれているのかも知れないと言う思いもあり、
半信半疑の気持でいたが、約束どおり女将が忍んできたのだった。
それでも十時頃迄はテレビを見ながら起きていたが、
心待ちにしている女将はやって来ず、私は諦め切れない気持を抱いて、
寝床に就いていたのだが、気が立って容易に寝付かれない。
それにも増して困ったのは、親の心子知らずと言うのか、股間の息子が大張り切りで、
痛いほど勃起したまま、容易に納まってくれないのだ。
時計の針が十一時半を回って、殆ど諦め掛けた時、外の廊下で軽い足音がして、
耳を澄ましていると、静かに部屋の表戸が開く音が聞こえた。
- 2014/12/01(月) 05:30:23|
- 隠れ宿の女
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