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別冊・詩と小説で描く「愛の世界」

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母秋子と娘名雪。其の一

母秋子と娘名雪1-1
雨が降っていた。
バケツをひっくり返したような、という表現が実にふさわしい、
文字通りのどしゃ降りだった。
日の出からは既に相当な時間が経っているはずなのだが、
空は一面黒い雲に覆われたままで、明るさはまるでない。
その暗い空からは、今も尚雨が激しく降り続いている。

「はあ……」 
そんな激しい雨の降り続く外の様子を、
水瀬名雪は居間の窓辺に立ってぼんやりと眺めていた。
清楚な感じのする白いノースリーブのワンピース姿も、
燦燦と陽光の照りつける最中にあっては涼しげに見えるのだろうが、
この雨天下にあっては逆に寒々しい雰囲気を醸し出している。
「あら、どうしたの名雪? そんなところに立って」
「あ、お母さん」
 
とそこへ、名雪の母親である水瀬秋子が通りかかり、
窓辺でぼんやりと庭先を見ている娘の様子を訝しく思って声をかけた。
「何を見てるの、名雪? 何か面白いものでも見える?」
「ううん、別に大したものは見えないよ。雨がいっぱい降ってる以外にはね」
「そう……」
 
いつの間にか秋子も窓辺に近寄り、
名雪と一緒になって雨の降りしきる庭先を眺めていた。
秋子の服装は名雪とはまた違う、
落ち着いた感じの黒いノースリーブのワンピースだった。
「すごく降ってるわね、雨」
「そうだね」
 
しばしの沈黙の末、秋子が何気なくぽつりと漏らすと、
名雪も同じように小さく呟き返す。それからまた、
どちらからともなくしばらく黙りこんだ後、今度は名雪から発言した。
「こんなことなら、もっと遅くに起きてもよかったかもしれないね」
「だめですよ、夏休みだからってあんまり寝坊ばかりしてたら」
「うん、わかってるよ。ちょっと言ってみただけだから」


母秋子と娘名雪1-2
穏やかな顔で注意する秋子に、名雪は照れくさそうに小さく舌を出して、
視線を窓に戻した。それからまたしばし、沈黙の時が流れる。
「残念だったわね、海」
「うん、そうだね……」
 
そう呟いた名雪だけでなく、秋子の顔にも寂しげで
哀しげな表情が浮かんでいた。
 
実はこの母娘、今日は久しぶりに家族水入らずで
海へ遊びに行く予定だったのだが、
いざ朝早く起きてみると、外は前述のとおりどしゃ降りの豪雨で、
しばらく待ってみても一向に止むどころか勢いも変わらなかったので、
結局予定は中止になってしまったのである。
「せっかく新しい水着も買ってきたのに、もったいないね」
「そうねえ……」
 
それからまたしばしの沈黙の後、
不意に秋子が何かを思い出したように名雪に尋ねる。
「ところで、名雪の新しい水着ってどんなのだったかしら?」
「あれ? わたし、言ってなかったっけ?」
「ええ、聞いてないわ」
「ふーん、そっか――あっ、そうだ」
 
秋子とのやり取りの後、名雪も何かを思いついたように小さく声を上げた。
「そういえば、わたしもお母さんの水着って
 どんなのだったか聞いてなかったよ。
 お母さんも、新しいの買ったんでしょ?」
「ええ、そうよ。まだ言ってなかったかしら?」
「うん、聞いてないよ」
「そう……」
 
それっきり2人はまた黙りこみ、耳に聞こえてくるのはお互いの息遣いと
窓の外からの激しい雨音だけだった。
それからしばらく経った後、今度は名雪から口火を切って言った。
「ねえ、お母さん」
「何、名雪?」
「実はね――わたし、今着てるこの服の下に、その新しい水着も着てるんだよ。
今日海に行ったらすぐに泳げるようにって思って準備してたんだよ」
「あら、そう。実はわたしも、名雪と同じなのよ」
「わ、そうなんだ。すごい偶然だね」
「ええ、ほんとね」
母秋子と娘名雪1-3
秋子は小さく微笑み、それから妙案を思いついたような顔つきで言った。
「ねえ名雪、せっかくだから今ここで、お互いに水着の見せ合いをしてみない?」
「えっ? 今、ここで?」
 
突然の秋子の提案に驚き、名雪は一瞬躊躇する。しかし、
「うん、いいよ」
 
相手が他ならぬ最愛の母親ということもあってか、
名雪はすぐに笑顔で了承した。それから少しだけ言いにくそうに、
「あ、でも……服脱ぐのを見られるは恥ずかしいから、後ろ向いててね」
「はいはい」
 
いくら家の中で他に人目もなく、下に水着を着こんでいても、
やはり他人の見ている前で服を脱ぐのは相当に恥ずかしいらしく、
名雪はさっさと秋子に背を向けた。
秋子も苦笑して同じように名雪に背を向け、そそくさと服を脱ぎ始める。
「名雪、そろそろ振り向いてもいいかしら?」
「わわっ、ちょっと待って……うん、オッケーだよ」
 
その言葉を合図に2人は同時に振り返り、
「あら」
「うわ」
 
そして同時に驚きの声を上げた。
どちらもお互いに想像していた以上の水着姿になっていたからである。
 
名雪はブルー生地の競泳水着、健康的な雰囲気が醸し出されていた。
 
一方の秋子は大人っぽいグリーンのワンピース、
下の方も面積が極めて少ないという大胆なデザインだった。
とても高校生の子供がいるとは思えない見事なプロポーションと相まって、
グラビアアイドル顔負けの色気が全身から放たれていた。
  1. 2014/06/23(月) 20:54:47|
  2. 同性愛(レズ)
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