娘婿を誘惑した未亡人。其の一
◇喪服の似合う女◇
女五十、一昔前なら華やかな男性関係などとは無縁な年代と思われたでしょうが、
しかし平均寿命が飛躍的に延びた昨今、その考えは時代遅れだと私は思います。
人間が八十年という長い年月を生きる様になったいま、恋愛やセックスも若者だけに
与えられた特権では有りません。壮年期を過ぎても老け込まず、老後を若々しく
人生を謳歌するには、色恋は欠かせない行為です。かくゆう私も、今年55歳の
折り返し点を過ぎた今でも恋に身を焦がし女であることを精一杯楽しんでいます。
私は健康な身体に恵まれて、経済的にも心配の無い未亡人という気楽な身分です。
独り娘も成人して、自立しています。現在の私には、これといった苦労はありません。
まあ、残りの人生をエンジョイできる恵まれた状況に有ると言えるでしょう。
手前味噌に成ってしまいますが、私は若い頃から男に不自由した事が有りませんでした。
その幸運は、五十を過ぎた今でも続いています。
こんな自慢を能天気に語って、いい気なもんだと思われるかも知れませんが、
五年前に夫を突然の病で亡くした時は、それはショックでした。大恋愛の末、
結ばれた夫を失ったのですから、食事もまともに喉を通りませんでした。
しかし周囲はそんな私の悲しみなど、どの程度推し量って呉れたものかは判りません。
事実、私は不躾な葬儀屋に霊柩車の中で口説かれたのです。
久保田と言う五十がらみの葬儀屋は悲しみに暮れる私の隣に座り、こう囁きました。
「こんなときに不躾だと思いでしょうが、言わせてください。
私も職業柄、色々な未亡人を見てきましたが、
貴女の様な美しい、喪服の色っぽい方は初めてです」
その言葉に、私はさほど驚きませんでした。と言うのも、男と言う生き物は
是と思う獲物に狙い定めた時には場所柄など弁えず狩猟せずには居られない
ハンターだと言うことを承知していたからです。
けれども、私には久保田を軽くあしらうだけの余裕がありました。
「言葉を謹んで下さいな。久保田さん、仏様の前ですよ」
私が軽く睨むと、久保田はしゅんとなりました。けれど内心では、
悪い気持ちはしませんでした。喪服姿が美しいと言うのは、
如何にも女の自尊心をくすぐる殺し文句でした。
久保田の視線が、又刺激的でした。霊柩車の中で、火葬場で、絶えずねちっこい
視線を私に送って居るのが判りました。男達に言い寄られるのには慣れていた私でしたが、
夫が死んだばかりだと言う状況が刺激を掻き立てずにはおかなかったのでしょう。
久保田の物欲しげな眼差しを浴びて、喪服の中で私の肉体は嫌が上にも火照って居ました。
夫のお骨を拾っている時も、襦袢の奥がしっとりと湿りを帯びていたのです。
私と言う女は、何と淫らだったことでしょう。久保田の事を非難する資格は、
私には有りませんでした。しかし、いかなる状況下でも女は女で有ることを忘れる事が
出来ない生き物なのかも知れません。それから、数日後の事でした。
「こんばんわ、久保田葬儀社です。お焼香させて戴きに参りました」
久保田が、家にやって来ました。娘の美佳は、まだ帰っていませんでした。
「まあ、わざわざ恐れ入ります。どうぞお入り下さい」
せっかく来てくれたものを、追い返す訳にもいきません。微かな胸騒ぎは有ったのですが、
私は久保田を家の和室に上げてしまいました。
「あれから一週間、お嬢様がお傍にいらっしゃるとはいえ、お寂しいことでしょう」
久保田は、しんみりとした顔でお仏壇に向かいました。
「ところで、今夜はお嬢様は?奥様、お一人のようですが・・・」
「ええ、長く忌引きを頂いたもので仕事が溜まっているらしくて。残業だそうです」
私がテーブルの上にお茶を置こうとしたその瞬間、久保田が私の手首を掴みました。
私は、完全に油断していました。線香を上げた途端の早業でした。
「なっ、何をなさいますの、久保田さん、主人が見てますわっ」
夫の柔和な笑顔の遺影を裏返しにひっくり返しました。
「さあ、これでご主人はもう見ていませんよ。
奥さん、一度でいい。僕の想いを受け入れて下さい!」
「ダメッ、いけないわ、久保田さん。止めて下さいっ」
欲情に生気を失った久保田を押し止めるのは、無理でした。
私は、畳の上に押し倒されていました。
久保田の口唇が首筋を這い始めると、全身から力が抜けて行きました。
私が夫を亡くして落ち込んでいた事も、私が悲しみに沈んでいたことも、
私の中に亡夫の面影が深く宿っていたことも、勿論言うまでも無い事でした。
しかし、夫の仏前で私はどうしょうもなくふしだらになっていました。
- 2012/08/21(火) 18:47:37|
- 義母相姦
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