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別冊・詩と小説で描く「愛の世界」

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憎き鬼(姑)ババァ・・・其の四

◇嬉しい話を◇
鬼バアバア4-1
憎き鬼(姑)ババァ・・・(笑)の敏江でございます。私も彼も今年67歳に成ります。
昨年末のお話しに成りますが・・・・。この不景気風はいつまで続くのでしょうか。
私の住む街のスーパーでは11月後半からジングルベルが煩く鳴り響き、
「ちょつと、うるさいわね」
と店員さんに苦情を言うと。
「余り不景気なのでお客様に購買力を付けて頂こうと思って」
「そんなの逆効果よ、逃げ出したくなるわ」
と笑顔ではあるが言い合った。
洋服売り場では、どれも二重の値札が付いており、
前の値段との格差で客へのサービスを表していた。
いつも込み合う地下の食堂も土・日以外は閑古鳥が鳴いている。

この冬は、また、悪いインフェルエンザが流行るらしい。
其の日突然、息子が姿を現した。近くに居ても声はすれども姿は見せずだった。
「寒くなったけど元気?」
「悪いわね、いつまでも元気で」
「あっはは、相変わらずだね。マダマダ大丈夫だ」
「嬉しそうね。ボーナス出たの?」
「どうってことないよ、雀の涙さ」
「出ない所もあるって言うから、良い方よ」
「で、プレゼント持ってきたよ」

年二回賞与が入るたびに小遣いまでは貰わないが、何がしかのプレゼントはあった。
大小の差は別として、気を遣う心根に感謝していた。
今年は都内のホテルでのディナーショーだった。しかも一泊付きで彼の分もあり、嬉しかった。

「お母さん、こんなの好きだと思ってね」
「大好きよ、あの人も喜ぶわ」
「音楽好きなの?」
「何でもよく知ってるわ。知識人よ。だから続いているのよ」
「それに、物事に理解力もあるしね」
「あら、どう言う意味?」
「いや、いや・・・」
「都内のホテルに泊まるなんて久し振りよ。嬉しいわ」
「お義父さんも一緒だしね」
「親を冷やかさないの」
「はい、はい、じゃ帰るよ」
お茶を入れるのも忘れ、久し振りに息子と話しに花が。
終わると息子はさっさと帰って行った。


鬼バアバア4-2
息子夫婦にも孫が産まれ、早く帰りたいのは判るが、母親として物足りなさも感じる。
ショーの日付は27日の夜の部で、7時からになっており、
何よりもクリスマスの騒音が過ぎてからなのが気に入った。早速、彼に電話。
「そう、嬉しいね。僕もちょうど君に話があるのでちょっと行ってもいい?」
「あら、何の話、待ってるわ」

慌ててそこらの物を片付け、うろうろしているうち、車の止まる音がした。
玄関は開けてある。彼らしくない興奮した表情で飛び込んできた。
「まぁー、お元気ね」
「嬉しいニュースだったからさ。まず入場券見せてよ」
そして、彼とショーの話をして、ひとしきり雑談が弾んだ。
「優しい息子さんで娘も幸せだよ。僕も何度が膝を交えて話したことが有るけど、
 性格は全く君に似ていないね。年に似合わず落ち着いた感じを受けたよ」
「鳶が鷹を産んだって言いたいんでしょ?」
「いや、君の育て方がよかったんだよ」

「それでお話って何?」
「あ、そうだ。じつは僕のほうでもホットニュースがあってね。
 北海道の息子が、暮れに家族を連れて泊まりにくるのよ。
 娘が何か言ったとみえて、君にも逢いたいってさ。
 それで、娘とも相談したんだけど、正月三日に僕の家で君と其方の家族も招待して、
 宴会を開こうって話になったのよ」
「新年会ね、嬉しいわ。孫も喜ぶわ」
「それでね、その息子がナマモノを送って来たので、今朝、娘の所にも分けてやったのよ。
 君にはチャンコ鍋を作って御馳走しょうと思って、朝から仕度してたところに電話が有ったんだ。
 だから、これから家に来ない?」
「まあ、嬉しい事って重なるのね。では支度するまで待って」
「着替えなら、そのままでいいよ」
と言われ、コートだけ羽織ると、
「今夜は帰れないから、寝間着を用意してよ。僕の家の物だとお気に召さないだろう?」
何やら意味深な事を言われ、素直に浴衣を一枚用意して、彼の車に同乗した。

多少でもボーナスの入った後の街中は、何となく騒がしく、年末ムードに溢れていた。
商店街を通り抜け、間もなく彼の家に着いた。
玄関には正月用の生花が活けてあり、手入れの行き届いた庭には菊の花が満開だった。
部屋もこざっぱりと片付いている。
鬼バアバア4-3
「貴方には負けるわ。男所帯には見えないわ。お花も上手に活けてあるし」
「君が来るのを、予期しての行動だよ。花はお正月用だよ。
 水さえマメに取り替えれば、一ヶ月くらい持つんだよ」
それにしても、隙のない状態に少々恐れをなす。暫く静かにしていると、
「何か気に障ったの?」
と言われた。
「いえ、別に。でも広いお家を是だけ綺麗に住んで、運動にもなるし、
 貴方はお一人で暮らすのが適しているわ」

「おや、意外なこと言うね。君が不愉快な思いをしないよう、一生懸命掃除をしたのが、
 かえって逆効果だったのかな。でもそんな受け取り方しないで呉れよ」
彼に、訴えるような真剣な眼で見つめられて、思わず言い過ぎたなと反省した。
素直に謝り、二人して、チャンコ鍋の用意をする。

生魚を器用にさばき、てきぱきと鍋に入れる手付きも物慣れて、
長年、男手で三人の子育てをした苦労が、上手に身に付いた感じだった。

鍋を囲む頃には夕暮れて、何となく疲れてしまった。そんな様子を素早く感じとり、
「悪かったね。すっかり用意してから君を呼べば良かったのに。
 嬉しい電話に素っ飛んで行ったので、すっかり手伝わせて、疲れたんだね?」
「大丈夫よ、私って家で気ままに過ごしているので、外の御宅に伺うと気疲れするのね」
「分かるけど。僕の所はそんな他人行儀に思わないでよ。もっと胸を開いて打ち解けてよ。
 親戚関係にもあるんだから」

鍋はグツグツ煮え始め、美味しそうな匂いが部屋一杯漂っているのに、
二人の間に気まずいムードが流れていた。
黙っているのはお腹も空いていたのだ。他意なんかなかった。
「お腹が空いたのよ。朝パンを一切れ食べたきりで、もうこんな時間でしょ」
空腹に成ると、人は不機嫌になるのだ。ようやく理解され、二人して大笑いとなる。

「よかった。どうなるかと思ったよ」
まずビールで乾杯。私はコップ一杯だけにして、鍋に集中する。
「いつも飲み過ぎて失敗するから」
「一杯栄養をつけて、良い夜にしようよ」
彼は意味ありげな事を言う。それからは和気藹々と話しに花が咲き、
鍋の中もどんどん平らげる。
  1. 2012/10/17(水) 16:27:37|
  2. 未亡人の性
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