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別冊・詩と小説で描く「愛の世界」

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逞しき未亡人。其の一

◇土いじりの歓び
逞しき未亡人1-1
仕事現役の頃は、全国を飛び回っておりまして、好きな庭いじりも侭成らなかった私ですが、
現場を息子たちに引継ぎ会長職に退いてからはやっと思う存分楽しめるようになりました。

四季折々に咲く花を愛でたり、ささやかな家庭菜園で丹精込めて作った取れたて野菜を
食する時の楽しみは格別です。

しかし、その基本となるのはやはり土作りでしょう。
初めの頃はホームセンターなどで買って来た培養土をもっぱら使っていたのですが、
同じ場所で同じ野菜を育て続けると、いわゆる「連作障害」が起こったり、
野菜の種類によって好む土壌が異なっている事を体験するに到って、
庭弄りの基本はまず土作りであることを知りました。

土は花や野菜たちにとって文字通りホームグラウンド。
つまり家と同じなのです。そこが快適な環境かどうかで育ち具合はまるで違ってきます。
収穫の終わった土をよく耕し、来年の種蒔きや苗植えに備えておく。そんな時は、
「今年も大地の恵みをありがとうな。来年までゆっくりお休み」
と感謝の言葉を掛けてあげます。

翌年になって種蒔きの時期がくると、その半月も前からよく掘り起こして耕し、
土質が酸性に傾いているようなら苦土石灰などを撒いて、全体が中性になるよう、
よくなじませておく。そんな時は「今年も頼むよ」と土たちに激励の声を掛けてあげるのです。
土には生命の鼓動が満ち、なんともいえずいい匂いです。

ところで、本日、こうしてPCに向かい文章をしたためましたのは、土づくりをきっかけにして、
ある素敵なご婦人との出会いがあった事を皆様にお知らせしたかったからでございます。

素敵なご婦人、と申しましても、決して絶世の美女だとか、垢抜けた感性の持ち主だと
言った意味ではありません。
57歳との事ですがとても武骨で、容姿は5年前に死んだ女房より遥かに劣り、
手はあかぎれだらけ、顔は日焼けし放題でお世辞にも美人とは言い難く、
見るからに「日本のお母さん」といった風情の方です。


逞しき未亡人1-2
しかし、額に汗して田畑を耕し、我が子のように野菜を育てている姿には、
どこか神々しいほどの魅力があるのです。

彼女、珠枝さんと出会ったのは、ある農産物直売所でのことでした。
最近では全国各地に「道の駅」なる施設がありますが、その一つが私の家から車で
30分ほど走ったところにございます。
そこの直売所に野菜を卸している生産農家の一人が彼女でした。

それは偶々息子の嫁と孫を伴って所用で出掛けた際の事でした。
「精が出ますね。これは全部オタクが作った物ですか?」
「そうだ。今年の夏は雨が多かって心配したけんど、なんとか育ってくれた。
 こいつらみんな無農薬で育てたんだ」

そう言いながら慈しむようにして野菜を売り場の棚に並べている姿に魅せられて、
いろいろと教えを請う事にしました。
「土づくりはどうやって?雨が続く時はどうするの?
 農薬を使わずに根腐れ病や害虫むから野菜を守るには?」
と立て続けに質問する私に彼女はトツトツと、
しかしとても嬉しそうに一所懸命伝授してくれたのです。

感激した私は後日、土づくりや栽培法を直接教わるために彼女の自宅を訪ねていく事にしました。
もっとも、「いくら頑張っているとはいっても、所詮はご主人のアシスタントだろう?」
と言う思いは訪ねて行く日まで消えなかったのですが。

ところが彼女の自宅へ行ってみて改めて感激しました。
なんと野良仕事をやっていたのは彼女一人だけ。ご主人は4年前に病気で他界し、
息子さん達は東京に出てしまい、老義父母を抱えて彼女一人だけで
畑を守り続けていると言う事を知ったのです。
にも拘わらず悲壮感や力んだところは微塵も無く、何時もニコニコと笑顔を絶やしません。
  1. 2012/10/20(土) 23:53:15|
  2. 未亡人の性
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